写真の『グベ』も赤く色付き、天高く馬肥ゆ秋もいよいよたけなわですね。
山の幸海の幸何を食べても美味しいものばかりで、ちょっとお腹のでっぱりが気にかかります。
すっかりと秋の食材に店頭は入れ替わり、あれもこれもと食指が動きます。

そんな中、以前から大変お世話になった方からご予約をいただきました。
コロナも落ち着いてきた上に長い自粛の反動もあってでしょうが、懐かしいお顔を拝見できるのは嬉しい限りです。
これまでにない献立でおもてなしさせて戴きました。

実は数年前からこんな料理を作ってみたいと憧れていたお店があります。
今は店名が変わり、ミシュランの一つ星に輝いているようです。
そのお店の以前の名前は奈良秋篠の森にある『なず菜』というレストランなんです。

奈良の郷土野菜を巧みに使い、食材の取り合わせも素敵なら盛り付けや器使いも素晴らしいお店です。
料理にも人格が現れるのでしょうね、こちらのオーナーの石村由起子さんの暖かく誠実な人柄が想像されます。

さて、その私の挑戦の出来栄えはと言いますと、蕎麦の茹で過ぎや里芋饅頭のポーションが大き過ぎたりと、段取りの詰めの甘さもあり、自分では60点位の点数でした。
こんな献立やスタイルでのおもてなしも、今後更に磨きをかけて、よりお客様に喜んでいただける様に精進していきたいものです。

では今回の献立です。

白蕪の摺流し

まずは白蕪の摺流しからスタートです。
白蕪と白仁田葱をじっくり炒め、鰹や昆布にいりこの出汁を加え煮たものを、ミキサーにかけたものです。
豆乳を加え濃度を加減したものに、葉っぱの青寄せと焼いて細かく切ったお揚げを飾ります。
真綿色の摺流し中に緑鮮やかな間引き菜とお揚げが引き立ちます。

にし貝と豆烏賊のポン酢ジュレ和えと酢締めのコハダ入り大根鱠のグラス仕立て

次は冷製料理で、まずはグラスの底に『にし貝と豆烏賊のポン酢ジュレ和え』を、間引いた大根葉を挟み『酢締めのコハダ入り大根鱠』をグラス仕立てにしました。
ロングスプーンを突っ込み、掬い出して召し上がっていただく趣向です。

里芋饅頭の鱈子餡掛け

次に『里芋饅頭の鱈子餡掛け』です。
塩して蒸した里芋を丁寧に裏漉し、揚げた海老に銀杏に百合根、木耳と滑子等を合わせて揚げたものに、トロリとした生姜入り鱈子の餡を掛けています。
付け合わせは蓮芋の含め煮を添えています。
細く削いだ牛蒡の素揚げを天盛りにし飾ります。
秋らしい一品ではないでしょうか。

十割蕎麦のペペロンチーノ風

麺料理として、今回『十割蕎麦のペペロンチーノ風』を狙ったのですが、これが小麦粉の繋ぎがないため、火が入りすぎてバラバラになり、なんとも見苦しい一皿になりました。
段取りの詰めの甘さが露呈した料理ですね。

鶏肉の塩麹漬け紙包み焼き 干し椎茸のソース & 白身魚の酒麹漬け焼き & ヤーコンの甘酒ドレッシング

お肉とサラダは『鶏肉の塩麹漬け紙包み焼き 干し椎茸のソース』『白身魚の酒麹漬け焼き』『ヤーコンの甘酒ドレッシング』を一皿に盛り込みました。
紙包み焼きはホイル焼きとさほど変わりはないのですが、パーンと膨らんだ紙にナイフを入れて、プーンと広がるソースの香りが楽しめます。
ちょっとしたサプライズを企画してみました。

グベと紫薩摩芋の寒天寄せ 抹茶ソース & 赤紫蘇スカッシュ

この後、雑穀ご飯と香の物それに自家製鰯の団子入り味噌汁が続きます。
そして締めの甘味ですが、今回は冒頭の写真の『グベと紫薩摩芋の寒天寄せ 抹茶ソース』『赤紫蘇スカッシュ』で終了となります。黒い種だらけのグベを丁寧に扱きとり、ボールに溜まった果汁はこの様に美しい黄色です。
なんとも言えない自然の色と甘さをそのままに寒天で寄せてみました。

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