おもてなしの予約を頂戴したら、何はともあれ食材の買い出しに行くのが第一です。
この時期はあれが出る頃だし、これを作ってそれから…うーむ。
いけません。
この机上で献立を考えるのは大抵行き詰まります。
イメージするものが目の前に無いのですからね。
第一献立が決まり、さぁ買い物に行っても目指す物がない事も多いものです。
本やネットで食べたいもの、作ってみたいものを選び買い物に行くのなら、集めるのは比較的に簡単でしょう。
以前レストランをやっていた時は、私もこんなスタイルでしたが。
今の私の料理のコンセプトは季節の物を使い、いかに四季の移り変わりを料理に表現するか?
なるだけ五感で感じていただけるように、見た目や味だけでなく、噛んだ時の感触や音、器から伝わる温かさや冷たさ、お椀の蓋を取った時の香りなどに心配ります。
更には木の葉や一輪の花でより季節感を、また名もなき陶工の手による器の、形や色使いまでも楽しんでいただきたい。
そんな想いで料理をし、献立を組んでいるのです。
写真はバターナッツ南瓜の羊羹に枝豆のずんだ餡をのせて、生姜と青柚子のシャーベットを添えた夏の甘味の一皿です。
季節の食材がまずあって、それをどう表現するかがいつも考えることですから、スーパーや業務用のお店には求めるものはないのです。
前日の夕方やその日の朝に取れたばかりの、新鮮な野菜や魚が並ぶ産直のお店には、そんな自然の恵みが溢れています。
まっすぐでもない、大きさも不揃いでも、堂々と生産者の名がついた野菜達。
旬の誰もが求める魚の中に、ひっそりと紛れている雑魚に、私は目が行きます。
どれもこれも立派なお野菜にお魚です。
まさに食財なのですから、活かさないと『もったいない』訳です。
刻んだり擦り潰したりするなら形は問いませんし、誰もが見向きもしないグロテスクな魚も食べ方を工夫したり、味が今一つなら昆布締めして旨味を足したりするといいんです。
そして産直のお店でしか手に入らないもの!
果物では山桃や杏に桑の実など、野菜では芋ずるに零余子(むかご)にヤーコンや菊芋など。たまに胡桃とかも手に入ります。
魚ではエソにウツボにエイなんか、高級魚だったり魚屋に並ばないものが、格安で買えるんです。
ほんとに有難いことでまた私の料理の世界を広げてくれます。
最近では猪や鹿の肉も料理する機会に恵まれて、この歳になっても初めて口にするものがあるのは、幸せなことに違いありません。
写真は鹿の肉を使った角煮。八角と黒粒胡椒を使って香り豊かに、金柑の甘露煮と細切りじゃが芋のフリットを添えます。
是非ご賞味下さい。