今回は定年を迎え、東京から奥様の故郷である長崎に越してこられたAさんのお話しです。

いま世界中に蔓延している新型コロナウイルスが、東京でも流行り出す直前のタイミングで越して来たそうです。

いやいやそれはなんともラッキーでしたねぇ。

大学卒業後からずっと東京暮らしで、海外にも駐在員として赴任されたそうです。

魚が美味しい長崎での第二の人生を始めるにあたり、自分で魚をおろし、あれこれと作れる料理を増やしたいと、私の教室にご縁をいただきました。

時々自分で包丁を握る事もあったそうですが、魚を触るのは初めてと言います。

ですが手順をお教えすると、初めてとは思えない包丁使い、三枚おろしも難なくこなします。

お上手ですねと褒めると、嬉しそうに歯に噛んでおられました。

今回仕入れた魚は丸鯵に鯛とエソ、それにぶ鯛でした。

まずはそれぞれ鱗を取って内臓を出します。

包丁の角度に入れ方と、鱗の取り忘れが多い箇所を説明します。

内臓はなるだけ包丁で傷付けないに!

身が生臭くなりますからね。

いつものことですが、魚をおろすのを教えるのは時間が掛かります。

ですが、ご本人は要領を得たご様子で、あとは練習あるのみです。

筋がいいようですから、上達は早いように感じます。

さぁ、下ごしらえが終わったら料理に取り掛かりますよ。

まずは鯵の片身はお造りに、もう片方は締め鯵にします。

私のやり方はまず砂糖で締めて、その後に塩そして三杯酢に浸け置きます。

こうすると締まりすぎず、しっとりと仕上がるのです。

もちろん鯖でも鰯でもコノシロでも同様です。

鯛はお煮つけにします。

先に甘辛い煮汁を作り沸かしたものに、切り身の鯛を入れ煮ていき、上側の身にはお玉で煮汁を掛けながら、味を乗せていきます。

つまり煮汁は少なめで、鯛の身の外側は煮汁が染み、中は白身のままです。

とろりと光沢を帯びた汁に、内側の白身の部分をつけながら食べるわけですね。

煮汁が染みた身の味と、煮汁をつけながらの味わいが、両方楽しめる訳です。

ご家庭ではともすれば身の中まで、醤油色に煮てしまう事が多いですよね。

蒲鉾の材料で知られるエソは、とにかく細い骨が多く厄介なのですが、旨味が濃いので塩水に浸け置いたものを、一夜干しにします。

今回は前に干した物を素焼きにします。

これも外側の塩が効いた身と、うっすらとした塩加減の身が両方楽しめます。

おろした後の頭や中骨は昆布と共に煮出して、出汁を取りお吸い物にし若布を浮かべます。

またエソのお腹にあった真子を使い、蕨と共に卵でとじました。

これは薄口の醤油味の甘辛い味付けです。

なんとも上品な一品です。

ぶ鯛は切り身にして酒粕床に並べ、試食は次回ということにします。

先日から下漬けしていた高菜漬けを仕上げ配膳して、さぁいよいよ試食です。

いやぁ〜魚尽くしで野菜料理が無かったですが、Aさんお煮つけがいたくお気に入りのご様子でした。

なんとか今日もお役に立てたようで、ホッとしました。

お疲れ様です!

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